どーも!執行役員の武市です。
今回は2026年10月以降、順次改定されている最低賃金、そして採用市場や採用活動などに触れた内容について書いてみました。
2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円。前年の1,121円から56円の引き上げとなりました。
大阪府では、2026年10月1日から時給1,231円が適用されています。
最低賃金の上昇は、働く人にとって収入アップにつながる一方、企業にとっては人件費の増加という大きな課題でもあります。
しかし、採用市場という視点で考えると、単純に「最低賃金に合わせて給与を上げればいい」という話ではありません。
今回は、
・最低賃金はこれまでどのように上がってきたのか
・今後、最低賃金はどうなっていくのか
・求職者や企業にはどのような影響があるのか
・これから企業は採用活動をどう見直すべきなのか
について、採用の視点から分かりやすく解説します。
最低賃金はここ数年で大きく上昇しています
まず注目したいのが、最低賃金の上昇スピードです。
全国加重平均を見ると、ここ数年で最低賃金は大きく上昇しています。
2020年度 902円
2021年度 930円
2022年度 961円
2023年度 1,004円
2024年度 1,055円
2025年度 1,121円
2026年度 1,177円
2020年度から2026年度までの6年間で、275円上昇したことになります。
特に2023年度以降は上昇幅が大きくなっており、2025年度は前年比66円増、2026年度も56円増となりました。
つまり企業にとって、最低賃金の上昇は「今年だけ対応すればよい問題」ではなく、今後も継続することを前提に人件費や採用戦略を考える必要がある経営課題になってきています。
今後は「全国平均1,500円」がひとつの目標に
政府は最低賃金について、適切な価格転嫁や生産性向上を進めながら、2020年代に全国平均1,500円という目標の達成に向けて取り組む方針を示しています。
もちろん、「毎年必ず一定額上昇する」「○年に必ず1,500円になる」と決まっているわけではありません。
最低賃金は、労働者の生計費や賃金水準、企業の賃金支払能力などを踏まえて審議されます。
ただし、近年の動きを考えれば、企業側も今後さらに賃金水準が上昇する可能性を想定しておく必要があります。
特にアルバイト・パートを多く雇用する飲食、小売、物流、介護、サービス業などでは、最低賃金の上昇が人件費に与える影響は決して小さくありません。
最低賃金が上がると、社会はどう変わる?
最低賃金の上昇には、当然ながらプラス面と課題の両方があります。
働く人の収入が増えれば、物価上昇への対応や生活水準の改善につながることが期待できます。
また、賃金水準が上昇することで、企業間の人材獲得競争が活発になり、より良い労働条件や職場環境を整える企業が増える可能性もあります。
一方で、企業側の人件費負担は増加します。
特に人件費率の高い業界では、商品・サービス価格への転嫁、生産性向上、省人化、業務効率化などを同時に進めなければ、利益を圧迫する可能性があります。
最低賃金の上昇は、単なる「給与の問題」ではなく、企業の事業運営そのものを見直すきっかけになりつつあるのです。
求職者の「給与を見る目」も変わっていきます
採用活動において、特に注意したいのがこちらです。
最低賃金が上がると、求職者が求人を見る際の給与相場も変わります。
例えば最低賃金が1,200円前後のエリアで、
「時給1,230円」
という求人があったとします。
数年前であれば十分魅力的に見えた給与でも、最低賃金そのものが1,200円を超えてくると、求職者から見れば「最低賃金とほとんど変わらない求人」に見えてしまいます。
つまり、
法的に問題のない給与=採用できる給与
ではありません。
求職者はIndeedなどの求人サイトで複数の求人を簡単に比較できます。
「こちらは1,250円、あちらは1,350円」
というように比較されるため、最低賃金だけでなく、同じエリア・同じ職種の採用相場を把握することが、これまで以上に重要になります。
最低賃金上昇で起こる「賃金の横並び」に注意
企業側でもう一つ注意したいのが、既存スタッフとの給与バランスです。
例えば、
未経験者 時給1,200円
経験者 時給1,300円
だった企業で、最低賃金上昇に伴い未経験者を1,250円へ変更した場合、経験者との差は100円から50円になります。
さらに新規採用を優先して求人給与だけを1,300円にすると、
「新人と自分の給与がほとんど変わらない」
という状況が生まれる可能性があります。
これは既存スタッフのモチベーション低下や離職につながるリスクがあります。
そのため最低賃金改定時には、募集時給だけを見るのではなく、既存社員・アルバイトを含めた賃金テーブル全体を確認することが重要です。
では、企業は何をすればいいのでしょうか?
最低賃金が上昇する中で、企業がまず行いたいのは次の5つです。
1.現在掲載している求人の給与を確認する
まずは、現在掲載中の求人をすべて確認しましょう。
アルバイト・パートだけでなく、月給制の正社員求人についても注意が必要です。
月給制の場合も、対象となる賃金を1時間あたりに換算した金額が最低賃金以上になっている必要があります。
また、試用期間中だけ給与が異なる求人についても確認が必要です。
2.最低賃金ではなく「採用相場」と比較する
ここが採用において非常に重要です。
最低賃金が1,231円だから、
「1,231円以上なら大丈夫」
と考えるのではなく、
競合企業はいくらで募集しているのか?
を確認してください。
同じエリア・同じ職種の求人が1,300~1,400円で募集しているのであれば、1,231円では応募を集めることが難しい可能性があります。
採用給与は「最低賃金」ではなく、市場相場から逆算することが重要になっています。
3.給与を上げられない場合は「条件」を見直す
すべての企業が大幅な賃上げをできるわけではありません。
そこで重要になるのが、給与以外の条件です。
例えば、
・週5日必須 → 週3日からOK
・1日8時間 → 1日4時間からOK
・土日必須 → どちらかだけでもOK
・経験者限定 → 未経験者も応募可能
・固定シフト → 希望シフト制
・通勤手段限定 → 車・バイク通勤OK
など、応募のハードルを下げられる部分がないかを確認します。
求職者は給与だけで仕事を選んでいるわけではありません。
「自分の生活に合わせて働けるか」も非常に重要な比較材料です。
4.求人原稿で「給与以外の価値」を伝える
給与競争だけを続けると、採用コストは上がり続けます。
そこで重要になるのが、
「なぜ、この会社で働くのか」
という理由を求人原稿で伝えることです。
例えば、
「残業がほとんどない」
「希望休が取りやすい」
「未経験でも研修がある」
「職場の人間関係が良い」
「駅から近い」
「まかないがある」
「正社員登用がある」
「昇給制度が明確」
などです。
企業にとっては当たり前になっていることでも、求職者にとっては応募を決める重要な情報になることがあります。
給与条件と合わせて、その会社で働くメリットを具体的に言語化することが重要です。
5.「採用」だけでなく「定着」まで考える
最低賃金が上昇し、企業間の給与差が縮まるほど、求職者にとって転職・離職の心理的ハードルが下がる可能性があります。
「今より50円高い求人がある」
「同じ給与でも、もっと通いやすい会社がある」
といった理由で、別の求人へ目が向くことも考えられます。
そのため今後は、
採用できる給与だけではなく、
辞めずに働いてもらえる給与・待遇・職場環境
という視点がより重要になります。
最低賃金の上昇は「採用条件を見直すタイミング」
最低賃金の引き上げというと、
「人件費が上がる」
という部分に目が向きがちです。
しかし採用という視点では、これは自社の採用条件を見直す良いタイミングでもあります。
最低賃金が変われば、地域の給与相場も動きます。
給与相場が変われば、求職者が求人を比較する基準も変わります。
だからこそ、
「最低賃金をクリアしているから大丈夫」
ではなく、
「現在の採用市場の中で、自社の求人は選ばれる条件になっているか?」
という視点で見直すことが大切です。
これからは「最低賃金+採用相場」で考える
2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円となり、前年から56円上昇しました。
政府は今後も「2020年代に全国平均1,500円」という目標に向けた取り組みを進めています。
企業にとって、人件費上昇への対応は避けて通れない課題になりそうです。
一方で、採用活動で本当に重要なのは、最低賃金だけを見ることではありません。
最低賃金・地域の採用相場・競合求人・既存スタッフとの給与バランス・働きやすさ。
これらを総合的に確認し、自社の採用条件を設計する必要があります。
「応募が来ないから求人原稿を変える」だけではなく、給与や勤務条件そのものを含めて採用戦略を見直す。
最低賃金が大きく動いている今だからこそ、こうした視点がこれまで以上に重要になっています。